厳律シトー修道会の歴史

師父、教える聖ベネディクト
師父、教える聖ベネディクト

 律シトー修道会はその起源を、はるか遠い砂漠の師父たちの修道制まで、さかのぼることができます。砂漠の師父たちの修道生活と言われる、霊性運動は4世紀後半のエジプトに始まります。これは、エジプト、パレスチナ、シナイ、シリアまで広がったキリスト教刷新運動です。ナイル川の上流から、下流に至る流域に、集落的に修道者が集団を作って、修道生活を営みました。この運動の動機や原因には諸説があります。もっとも有力視されている説は殉教の新たな表現を求めての霊的刷新運動とするものです。キリスト教はペトロ、パウロの殉教の時代から殉教と迫害の時代を潜り抜けてきましたが、313年にローマ帝国に公認され、392年に国教とされました。国教とされたことに伴って、教会の世俗化が始まりました。多くの人々はより真正な生活を求めて砂漠に退き、そこで、祈りと福音の実践を追求する生活を始めました。これは自然発生的なキリスト教刷新運動と見なされています。人々を砂漠に追いやったのは、殉教者たちの熱意に鼓舞され、殉教の理想に燃えた神への愛と考えられています。ベネディクトの戒律には、「この師の導きから決して離れず、修道院において、死ぬまで主の教えを守り続け、忍耐強くキリストの受難にあずかり」(序;50)とあるように、殉教の精神を示唆する言葉が戒律の随所に見られます。